お知らせ News

2018年自然保護寄附講座公開講座

2018年11月22日 11時26分
学内イベント

筑波大学大学院自然保護寄附講座では、「生態系の保全と復元」をテーマに公開講座を実施しました。
各分野で目覚しい活躍をされている方々を講師としてお招きし、どの講義も活発な質疑がありました。
渡邉守先生、山野博哉先生、西廣淳先生、長谷川雅美先生、ご講義をありがとうございました。

 
 



詳しくはこちらをご覧ください→poster.pdf



【インターンシップレポート】「農林水産省林野庁」岡本奈緒美

2018年11月21日 12時08分
学外イベント

生命環境科学研究科 地球科学専攻 岡本奈緒美

〇はじめに

私は平成30年9月3日(月)~9月14日(金)の2週間(実働日数10日)にわたり、農林水産省林野庁にてインターンシップをさせて頂きました。私たちが住む日本では、国土面積の約7割を森林が占めており、森林は国土の保全、水源の涵養等の多面的機能の発揮を通じて、国民生活に様々な恩恵をもたらす「緑の社会資本」とも言われています。森林の健全な育成を通じて、国土機能など公益的機能を高度に発揮させること、さらに木材の安定供給を図るなど、民有林行政と国有林野事業を行うのが林野庁の大きな役割です。

その中でも私は今回、霞が関にある林野庁本庁、森林整備部計画課海外林業協力室という部署にてインターンシップに参加する機会を頂きました。海外林業協力室は、日本の林業の歴史の中で培われてきた植林や治山等の技術の海外への発信を含む、途上国への技術協力や、気候変動に関する国際的な適応・緩和策に関する事業を実施するなど、林野庁における国際協力を担う部署です。そのため、海外林業協力室には海外勤務経験者が多く、ケニアやパラグアイ等、海外での業務経験についてお話を伺うこともできました。

〇インターンシップの内容

インターンシップの内容は、「途上国における防災・減災」についての資料を収集し、取りまとめ、レポートを提出するというものでした。また、それ以外にも外国からの訪問者のお話を伺ったり、JICAの研修を傍聴し、国際協力取組や海外での植林等の実情について学んだり、資料の作成や翻訳等の事務作業を体験させていただいたりしました。

減災・防災に関するレポート作成においては、主に、資料収集・アイデアの醸成というプロセスを体験させていただきました。イメージしていた業務のスタイルとは異なるものでしたが、新たなプロジェクトを立ち上げる際に基盤となるプロセスであり、発想に新しさやユニークさが求められる非常に重要な業務に携わらせて頂きました。今回作成したレポートも今後の海外林業協力の在り方や展開方向の検討に資するものになれば良いな、と感じています。また、インターンシップ最終日には、レポート内容を海外林業協力室の皆様の前で発表し、質疑応答や意見交換をさせて頂きました。

資料の作成過程や発表後の意見交換において、林業や治山事業に関する動向について説明を受け、それらの活かし方について新たにアドバイスを頂いたり、過去の防災・減災の事例をご紹介いただいたりしたことで、より考えが深められたと感じています。このように、様々な方からの経験談やアドバイスを得つつ案を作成し、さらに意見交換することでより良いものに仕上げていく、というプロセスを通して大きなプロジェクトの計画・実施につながっていくのだということを実感でき、非常に貴重な経験となりました。

JICAの集団研修では、途上国からの出席者と共に森林・自然環境分野におけるJICAの取組や、森林保全に向けたNGO・NPOの取組についての講義を受けました。前者では、講義後の意見交換会で各国が現在日本に求めていることがそれぞれ異なっていることを知ることができました。また、海外への技術協力の形態が「先進国が指導する」ものではなく、「途上国自身が問題と解決策を提示し、先進国が支援する」という形態であることを実感しました。後者では、日本の若者の中で何をしたいのか、どんな職に就きたいのかがわからないという層が増加しているという問題が取り上げられました。この点について、私自身悩んでいる問題でもあったので理解しやすかったのですが、途上国の方々はどうしてそのような問題が出るのかが理解できない、という様子だったのが印象的でした。国の発展度合いや豊かさによって視点が全く異なるのだということを実感させられました。


書類資料の作成や翻訳等の事務作業については、林野庁の職員の方々が普段されている業務の一部について経験してみたいという思いから、こちらから提案してやらせていただきました。資料の翻訳を行った際、特定の語句には定型的な翻訳方法や言い回しがあると指摘を受け、自分の配慮の至らなさを実感するとともに良い勉強となりました。

〇感想・学んだこと

私が林野庁にインターンシップを希望した理由の1つは、自然保護や生態系に関わる仕事につきたいと考えたからです。私は現在、地質学を専攻していますが、野外調査へ行くたびに自然が好きだと感じ、それらを守り、次の世代に残していきたいと感じています。今回のインターンシップでは自然保護に関連して、自然をそのままの形で保護するだけでなく、人の手を入れて整備していくことで持続的に森林を管理していく、という考え方を知ることができました。実は私はインターンに行く前は、自然を保護するという観点から見て、「人の手が入る」ということにマイナスなイメージを持っていました。そのため、林野庁で森林整備や保全の考え方を初めて知った時、私がやりたい自然保護と考え方が異なるかもしれないと考えたことがありました。しかし、インターンシップ中に治山という言葉に出会い、また災害の復興のための治山、防災のための治山など治山にも様々な方法があることを知り、治山が本来起こるはずの自然のサイクルを人の手で補助し、早め、回復させるものであることを理解できました。インターンシップに参加したことで、人の手を加えて森林を整備することへの理解が深まり、このような方法もあるのだと考えられるようになりました。また、自然のサイクルを補助し、促進させる「治山」という事業に非常に興味を持ち、関わりたいと感じました。



上記で述べた通り、今回のインターンシップは業務の一部を体験するのみならず、林業や自然のもつ機能への学びを深める、というものだったように思います。私はこれまで林業に関わることがなかったため、インターンシップ期間中の課題として挙げられた森林という観点からの防災・減災という考え方自体が新鮮でした。そのため、予想以上に知識を頭に入れることに時間を費やしてしまい、担当の方には非常にご迷惑をおかけしてしまったと思います。また、我が国が途上国で防災・減災の取組を実施する際の具体策について、レポートでは具体案にまで十分言及できなかったことが非常に悔しく、心残りです。しかし最終日の発表会で、海外林業協力室の方に、レポート内で気候変動の緩和と適応、EBA(Ecosystem-based Adaptation)とEco-DRR(Ecosystem-based Disaster Risk Reduction)等の用語の違いが分かりやすく整理されているといっていただけ、少しでも海外林業協力室の方の助けになれたことが本当に嬉しかったです。

最後に、今回のインターンシップに参加したことで、自分のやりたいことや未熟な点に気づくことができました。また特に、時間のマネジメントの重要性やコミュニケーションにおける積極性、質問に対してすぐに的確な返答をする能力など、非常に当たり前のことがまだまだ未熟であったことを実感させられた2週間でした。今回のインターンシップで学んだことを無駄にせず、しっかりと今後の生活に活かしていけるよう意識していこうと思います。

末筆ですが、このような機会を与えてくださった先生方、林野庁計画課の皆様、海外林業協力室の皆様、インターンシップ中に様々な面においてご助力頂いた皆様、インターンシップを受け入れていただき、2週間という長い期間なにかと気にかけてくださり、誠にありがとうございました。心からの感謝を申し上げます。このインターンシップで得られた貴重な経験や知識、気づきを活かし、今後も精進してまいります。2週間、たいへんお世話になりました。ありがとうございました。

【インターンシップレポート】「知床財団」瞿芳馨

2018年11月21日 11時39分
学外イベント

【インターンシップレポート】

「知床財団-羅臼ビジターセンター」

人間総合科学研究科 世界遺産専攻 瞿芳馨(クホウシン)

この度私は自然保護寄附講座の支援をいただき、2018年9月3日から9月30日まで、知床財団羅臼地区事務係の拠点施設である羅臼ビジターセンターにインターンシップに行ってまいりました。

知床財団は1988年に斜里町によって設立されました。2005年7月、知床は世界自然遺産に登録されました。そのことをきっかけに、2006年11月、知床半島の南側に位置する羅臼町が知床財団の共同設立者として参画することになりました。知床財団は、地元ならではの創意工夫と努力を重ね、国立公園の現場を担う実働部隊として、「知床を知り、守り、伝える」活動を行っています。羅臼ビジターセンターは、人と知床の自然とを結ぶための拠点の一つであり、知床の自然、歴史、文化、利用に関する展示や映像、解説を通して、知床国立公園を理解し、知床の自然を楽しむための情報を提供しています。


図1: 羅臼ビジターセンター

私は知床財団の羅臼ビジターセンターに所属し、来館者への対応や展示物・掲示物の作成業務を中心に行いました。また、時期によって開催されるルサカフェというイベントのサポートや、財団の職員の方々との野外での草刈り(外来種駆除)、ルサ柵作り、クジラひげ処理などの作業も行いました。羅臼ビジタ-センターは一つの固定された仕事だけではなく、室内と野外を合わせ、様々な仕事ができる職場でした。そのため、インターンシップは飽きることがなく、毎日楽しく、充実していました。


図2: カウンタ―

インターンシップに参加させていただいたおかげで、様々な仕事を体験することができました。以下、いくつかの活動について紹介させていただきます。一つ目はミニレクチャーです。これはインフォメーション業務の一環であり、来館者に展示物を見ていただくだけでは分からないストーリーや自然解説を行う、10分程度の業務です。私は、知床に生息している世界最大級のシマフクロウをテーマにして、2週間ほど発表内容を準備し,インターンシップ期間中、来館者に説明を行いました。


図3: ミニレクチャー

二つ目は自然調査に関する作業です。私が行ったのはVC(ビジターセンター)巡視、自然環境巡視、カラフトマス産卵床調査の3つです。これらの作業はすべて自然環境を把握するためのモニタリング調査です。VC巡視とは羅臼ビジターセンターの運営業務の一つであり、自然情報を収集し、巡視記録を作成し、来館者への説明に利用するものです。この巡視を通して、知床の自然環境の現状を把握することができます。多くの動植物について勉強することができ、知床の自然保護にとって重要な仕事だと思いました。カラフトマス産卵床調査も大切な仕事です。知床ではカラフトマスの資源量が大きく、このことは漁業のみならず、海から森への生態系の循環を担う重要な役割を果たしていることを意味します。そのため、カラフトマスのモニタリング調査の継続は、知床の世界遺産としての価値を守ることにつながります。その調査データは知床世界遺産科学委員会とIUCNにも報告されています。


図4: カラフトマス調査地 

3つ目はヒグマに関する作業です。私が参加した作業はヒグマの解体サンプリング、電気柵のメンテナンス、およびヒグマの糞の採集でした。知床には数多くのヒグマが棲息していますが、観光客や住民とヒグマとの日常的接触、およびそれに伴うヒグマの人馴れが大きな問題となっています。市街地に侵入し、農作物被害が発生することもあります。緊急時には有害駆除をせざるを得ない時もあります。ヒグマの解体サンプリング作業では、捕獲したヒグマの基本データを記入し、外部研究者と共同でヒグマ個体のDNAを調査するためのサンプルを収集しました。また、ヒグマの侵入を防止する電気柵を定期的にメンテナンスする作業をしました。これは、電気柵をチェックするだけではなく、電気柵付近の草を刈る作業も行いました。


図5: ヒグマの解体サンプリング作業

インターンの最後では、「知床エコツーリズム検討会議」に参加させていただきました。この会議には、環境省職員、専門家から地元自治体、関係民間組織など様々な方が出席し、知床の自然状態のみならず、社会環境において現在どのような課題があるのか、持続可能な観光業において今後の方針はどのように決めるのかなどの話を聞くことができました。この検討会議では、行政機関だけでなく、委員の先生方、地域関係団体など多くの人達が集まり、誰もが意見できる場が作られていました。

インターンシップを通して、地域交流および自然保護活動の場へ参加をさせていただき、色々な仕事を体験することができました。とても有意義な時間を過ごすことができたと思います。私は世界遺産について勉強しています。世界遺産である知床の保護と管理について、地域の民間組織はどのように運営されているのか、自分の目で見て、自分の身で体験し、直接感じることができたことが大きな収穫でした。最後に、温かく受け入れて下さった羅臼ビジターセンターの皆様、お世話になった全ての方々に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

注)図2、3、5の写真はビジターセンタースタッフの方にご提供いただきました。