【インターンシップレポート】「トヨタ白川郷自然學校」阿部紘平
2017年10月16日 11時29分トヨタ白川郷自然學校は岐阜県大野郡白川村に位置する。世界文化遺産に登録されている白川村の合掌集落からほど近い。周囲は標高2700 mを越える白山をはじめとする山々や湖に囲まれており、普段街中に暮らす私たちはあまり感じることのできない大自然がそこにはある(図1)。自然學校はトヨタ自動車がオーナーとして土地や初期投資の援助をしたがその後は独立採算方式をとる民間・NGOである。京都議定書採択、トヨタプリウス発売と自然・環境を守る姿勢が評価される時代になり、環境教育の場所が必要になるということで、2005年に完成した。以下に運営理念を引用したが、コンセプトとしては、日本独自の環境教育の施設を目指し、自然に関する新しい客層を生み出すことを目標としている。雄大な自然に触れ、自然の恵みを頂き、自然を学ぶ様々な活動を通して、自然の素晴らしさや自然は守るべきものであるということを再認識し、自然に対する興味を持ってもらおうということである。つまり、日本におけるエコツーリズムの先駆けであると言える。
今回のインターンで私はプログラム研究部という部署に配属された。その部署では、お客様に自然に触れて、自然を感じてもらうための様々な活動(以下プログラムと呼ぶ)の企画・立案・運営しており、その中でも運営業務を体験した。プログラムの運営を通して、まず私が感じたことは、自分の仕事の向こう側にはその日の活動を楽しみに待つお客様がいることを常に意識することが大切だということだ。例えば、自然學校近くの川(図2)でイワナを手づかみで捕獲して、炭火で焼いて食べるというプログラムでは、イワナを捕まえる場所の流量を調整したり放流したイワナが逃げないようにネットや柵を設けておくのだが、それらに不備があれば用意したイワナが逃げてお客様に迷惑をかけることになる。あるいはお客様が怪我をしてしまう可能性もある。捕まえたイワナを焼くことはスタッフが担当する(図3)のだが、せっかく捕まえても焦がしたり、火が弱く時間内に十分に焼けないなどがあっては台無しになってしまう。炭を組む作業一つ、焼く魚を受け取る作業一つ、自分が動かす手はすべてお客様が笑って楽しんでくれている姿に繋がっている。それは緊張も伴うが同時にやりがいでもあった。自然と触れる場を提供している側としてはそのことを常に頭に置いておくべきだと感じた。
しかし、民間・NGOであるがための難しい点もある。それは確実に運営を続けるためにお客様に来続けていただかなくてはいけないという点だ。そのためにはプログラムはただ単に参加して体験してもらうものでは不十分であり、その金額に見合った価値をお客様に見出していただけるように工夫しなければならない。例えば、レザークラフト体験というプログラムでは、革を加工して作品を作ってもらうのだが、作業自体はそれほど難しくないため、作品を作るだけの体験であればどこかのお土産屋さんで買った方が早いし安いかもしれない。しかしそこには、実際に革に触れることで、得られる「革」という素材の魅力を感じることができるという付加価値がある。つまり、革の持つ軟らかさ、手触りや質感、重みがどのようなものなのか、革はハサミで切ることができ、水をつけて形を整え乾かして成形することができるという加工のしやすさなどである。私たちスタッフ一人一人が、そのプログラムを通してお客様に何を感じて、何を学んでいただきたいのかを理解し、伝えることがそうした付加価値をプログラムにつける上では大切である。