生命環境科学研究科 生物資源科学専攻 崔悦朶
1.はじめに
トヨタ白川郷自然學校は、多くの自然学校がそうであるように、“人と自然をつなぐ”ための体験と環境を提供しています。アクティビティは豊富で、季節に合わせて自然でのアソビも変わり、大人から子供まで十分楽しめるよう心掛けられているのがよくわかります。夏はイワナ獲りやトレッキング、火おこしチャレンジ、冬にはイーグルづくりやスノーシュートレッキング、スノーライダーなど白川郷の積雪を活かしたプログラムがあります。多種多彩なアクティビティの他、子供向けのキャンプもあります。“白川GO!GO!キャンプ”は、特に自然の中で生きる力を身に付け、楽しさを知ることを通して、子供の自主性や社会性、感性、創造性、協調性、そして自然を大事にすべきだという意識を共に成長させていくプログラムです。トヨタ白川郷自然學校とは豊かな自然環境を活用し、環境教育の人材を育てつつ、人々に自然のありがたさや大切さを伝えるための活動が日々行われています。
2.活動内容
私は7月31日から8月10日にかけて10日間トヨタ白川郷自然學校のインターシップに参加しました。今回私が配属されたのは、まさにはじめに紹介した“白川GO!GO!キャンプ”の一つ、“田舎暮らしキャンプ”でした。私はキャンプのサポートスタッフとして18名の子供たちと一緒に6日間過ごすことになりました。
“田舎暮らしキャンプ”は、子供たちと一緒に自然學校特製の『合掌テント』を組み立て、そこで子供たちが寝泊まりし、川や野山で遊んで食べて楽しむプログラムです。子供たちの自主性を重んじるため自由度は高く、その反面、安全管理のハードルは高いです。そのためキャンプ前の準備がとても重要で、綿密な打ち合わせが行われました。キャンプスタッフの方々は“白川GO!GO! キャンプ”の専用マニュアルを作成されており、その中には子供の怪我や病気の対処法、森の中での虫や熊対策、子供との付き合い方などが詳しく書かれています。これは担当スタッフの方がこれまでの経験をまとめ、毎年更新しているマニュアルです。“白川GO!GO!キャンプ”に携わるスタッフのスローガンが「Try & Error Try Again!」であり、子供達が失敗を恐れず、よりキャンプを楽しめるように、私たちに何ができるのかをあきらめずに考えることが、今回のプログラムを進める上で重要な心構えと最初に教えられました。
今回の私の役割は主に写真撮影と安全管理でしたが、実際行ってみると、子供たちの活動のサポートは楽しさも、難しさもありました。参加する子供たちの年齢層はバラバラで、小学3年生から中学1年生までいました。初日は『合掌テント』をみんなで一緒に組み立てる作業で、初対面の子供たちが協力し合う環境を作るのにどのようにサポートできるかが、私たちスタッフの課題でした。炎天下の中、子供たちに水分補給をするよう注意するだけでなく、うまくグループに入り込めなかった子供も自然に溶け込めるような配慮が必要でした。
『合掌テント』を立てた後の活動も充実していました。はじめの二日間は主にキャンプスタッフのリーダーがみんなを引き連れて色々な活動をしました。例えば森の中の散策、川遊び、世界遺産の白川郷合掌集落の探検、そして自分たちで収穫した夏野菜でカレーを作る活動など盛りだくさんでした。

図1 子供たちが自分たちで収穫した夏野菜
4,5日目は、最初の二日間で覚えた遊びを生かし、子供たちに遊びづくり会議を開いてもらい、スケジュールはほぼ完全に彼らに任せる形となりました。その主旨は子供たちが自分の意志で行動を選択できるような場を設け、自分たちで楽しい時間を創り上げていくことです。この二日間は我々キャンプスタッフにとっても未知数で、子供たちがどれだけ自然の中で遊びを創れるかは彼ら次第というものでした。私たちはあくまでも見守る立場にいて、補助をすることで子供たちの安全を守るのが第一の仕事でした。この二日間を通して、子供たちの団体意識を高め、お互いに妥協し、積極的に自分の意見を言えるようにする、年上の子が年下の子の意見にも耳を傾ける、みんなが納得する案を出す努力をする、そして結果がどうであれ、自分たちが出した案に自分たちで責任を取る―4,5日目は子供たちに自然のありがたみと楽しさを教えるだけでなく、自ら社会性をも学んでいく大切な時間でもありました。

図2 子供たちが川遊びの際獲ったニジマスを自分たちでさばいて焼き上げた

図3 最後の夜はみんなでバーベキュー。左端の魚が子供たちが獲ったニジマス
前にも書いたように、これらの活動は子供たちの自主性を中心に行われるため、安全管理が難しくなります。ちょうど夏の暑い時期だったので、野外活動は疲れが出やすく、体調を崩す子供も何人かいて、子供たちの体調の変化に注意することの難しさを思い知らされました。遊びづくりではナイフやノコギリを使う工作もあり、子供たちがナイフで手などを切らないように目配りするのも大変でした。今回は6人のキャンプスタッフがいましたが、それでも完全に怪我を防ぐことができませんでした。それほど子供の安全管理は難しいということです。
キャンプスタッフの方々が子供たちの安全管理にこだわるのは、子供を危険から守るという責任ももちろんありますが、もっと子供たちにキャンプをと楽しんでもらいたいという心が出発点だと思います。単に危険から守るためならナイフを握らせないですし、川にも入らせないという方針で済みます。しかしそれでは本末転倒になるので、スタッフの方々はあらゆる危険を予測し、計画をたて、子供たちが自然を楽しめる環境を作るために絶え間ない努力をしています。私は今回のインターンを通して自然學校のスタッフの方々の仕事の大変さだけでなく、その意味をかみしめることができました。
キャンプの主役はなんといっても子供たちでした。みんなそれぞれ個性が違い、大人でさえそうそうできない魚さばきをできる子供もいました。視点が違えば考え方も違い、逆に勉強させられることも多々ありました。今回のインターンではキャンプの運営の仕方や流れ、普段見られない裏側を見られて大変勉強になりました。それと同時に、こういったプログラムを通して、多くの子供たちが自然に魅力を感じ、自然を愛する大人に育つのだろうと思いました。
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