トヨタ白川郷自然學校は岐阜県大野郡白川村にある、NPO法人とトヨタ自動車(株)、白川村が三位一体となって運営している自然學校である。合掌造りの建物が多く残る荻町集落は世界遺産に登録されており、国内外問わず多くの観光客が訪れている。トヨタ白川郷自然學校は荻町の西部にかつて存在した馬狩集落の跡地に造られている。この馬狩集落は1973年に廃村となっており、2005年にこの學校が出来るまで無人であった。この學校の運営理念は、3つ存在し以下のようになっている。
2.インターンシップの内容
自分はこのトヨタ白川郷自然學校で7月18日~27日で10日間インターンを行った。主な活動としては、自然學校に遊びに来たお客様へのプログラム運営補助を行った。体験内容は団体客向けのプログラムと個人客向けのプログラムに分けられる。
団体向けにはまず、自然學校周辺で気候性地形療法を体験するツアーのサポートを行った。このツアーは自然學校にある、クアの道を利用し、脈拍数や皮膚温度など歩いている際の体の状態を計測したり、景色のいいところで声を出したりすることで、ただ歩くだけでないウォーキングを実施していた。この活動では學校のスタッフの方の自然に対する知識量に驚かされた。次に行ったのは、自然學校オリジナル「合掌テント」設営のサポートである。これは、學校内の敷地で、お客様と協力して、合掌の形をしたテントを設営するというものであった。その際に白川郷に自生していて、実際の合掌造りの結束材としても使われているマンサクをねって(繊維を捩りほぐして)木の骨組を結束させるなど白川郷での活動でしか味わえない手順を組み込んでいた。3つ目にイワナ獲り&アウトドアクッキングのサポートを行った。イワナ獲りでは河川の一部に安全性や娯楽性を考えて作られた魚獲り会場を使用しており、子供では簡単には捕まえられないが溺れる心配はなく、最後は皆が捕まえられる位のイワナ獲り会場を作っているところに感心させられた。自分はイワナの放流や子供たちが流れの強い場所に行かないように見ている役目を行った。アウトドアクッキングでは、野外にて皆で協力して調理を行った。今回自分が担当したお客様は子供が多い団体であったので、子供たちが飽きない位の時間で、協力して出来るようなプログラムになっていた。お客様は野外で調理を行ったことがない人も多かったのでとても楽しそうに調理していたのが印象的であった。以上が団体客向けに行った活動である。
次に個人客向けのプログラムの内容であるが、まず、エコな素材を使用したエコなクラフトの作成の補助を行った。クラフトの材料にはいらなくなった車のシートを切り抜くことで、動物の足跡コースター制作の補助を行った。補助の際は、コースター制作で廃材を再利用している点などを強調すると特異性をアピールできると教わった。また、お客さんの年齢層に合わせて作業手順を変えるなどの工夫をしていた。森の中での火おこしを体験していただくプログラムでは、森の中で火をおこす際の補助を行った。この際にお客様のレベルに合わせて、マッチで火をおこしてもらったり、ファイヤースターターを使用したり、白樺の皮を使ったりと工夫をしていた。また、焚き付けに使うもののクイズや、火がつきやすいものの違いなどを楽しく説明するなどを行うことで、お客様を引き付ける工夫をしていると感じられた。イワナ獲りプログラムの行われる会場の準備ではイワナの運搬や会場制作を行ったが、このプログラムは生き物を相手としているのでイワナを素早く運搬する必要性や、河川周辺の環境を人工的にコントロールする難しさを感じた。最終日には白川村の青年の方と外来種の駆除を行った。この活動は、新しい住民である、自然學校の従業員と村の方が一体となって白川村の自然を守っていると感じた。以上が個人向けプログラムのサポートで経験したことである。
トヨタ白川郷自然學校(夜)
3.感想
自分がこのインターンを通じて一番記憶に残っているのは、外国人の団体客へ「合掌テント」の設営やアウトドアプログラムの対応を行ったことである。この団体のお客様はガイドの方や一部のお客様を除いて日本語を話すことが出来ず、基本的に対話は英語を中心に行っていた。野外での活動の場合、活動における危険性や作業手順をお客様に適切に伝える必要があるが、英語ではそれが困難であり、この場合ジェスチャーで伝えることや、通訳の方とうまく連携をする必要があると感じられた。この団体への対応では自分もスタッフの一人として全日対応を行ったため、お客様と同行する機会も多く、お客様に覚えていただくことが出来て非常にうれしかったし、自分としても一番記憶に残った。白川郷合掌家屋
自分はこのインターンを通じて感じたことに、一つのプログラムを実施するためには、実施することよりも、実施するまでの準備の方が大変だということがある。例えばあるプログラムを実施するためには、何を準備するのか、どこで実施するのかなどをお客様のレベルとニーズに合わせて変える必要があり、自然を相手にしているので、大雨や強風などによってフィールド状況に変化が出てしまうので、プログラム開始前に場所の整備を行う必要があることが感じられた。このことを踏まえると、やはりプログラムを実施するには綿密な計画と準備が必要であるということが感じられた。また、この自然學校の自然に関する知識量や安全管理に対する意識の高さにも驚かされた。このような気持ちが評判の高い自然學校を作っていくのだと感じられた。
最後になるが、自分はこのインターンにきて都会の企業では体験できないような働き方を体験出来たし、本当に良かったと思う。ぜひ来年もこの自然學校にインターンに行ってくれる人がいることを期待する。