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【レポート】UNESCOインターンシップ

2015年7月31日 12時01分

2015年度 世界遺産センター インターンシップレポート

平田里沙
世界遺産専攻 修士2年次


●    インターンシップ概要

2015年5月上旬から7月下旬まで、自然保護寄付講座のインターンシップ制度のご支援のもとUnited Nations, Educational, Scientific and Cultural Organization(UNESCO)にある世界遺産センター、アジア太平洋ユニットにてインターンシップを行いました。


 *UNESCO内からの風景、パリのシンボルであるエッフェル塔も近くです。


ユネスコという組織自体が関わっている範囲は教育・科学・文化と幅広くはありますが、世界遺産はその中でも最も認識度が高い取り組みではないかと思います。
しかしながら、あくまで世界遺産センターはユネスコの組織の一つであり、50~60人程の職員で世界遺産委員会、ユネスコ総会、各締約国の新規遺産登録や保全審査の管理、その他ミッションやワークショップなどの仕事に取り組んでいます。


今回の私のインターンシップで主な業務内容は以下の通りです:
(1)第39回世界遺産委員会に関連する業務補助
(2)日本・モンゴル・東南アジア・太平洋小島嶼国に関する世界遺産条約実施のための業務補助
上記に加え、その都度アジア太平洋ユニットと必要とされている業務の補助を行いました。

毎年日本のメディアでも大きく取り上げられる世界遺産委員会ですが、開催が迫った6月と7月は世界遺産センターもそのための準備で慌ただしくなります。
私は保全状況審査のための書類のファイリング、また事務局が委員会中に発表するためのパワーポイントの作成などを行いました。
また、委員会が終了した後にはそれぞれの決議文を締約国に報告するための決議文の作成、各デスク(担当者やチーフ、センター長)の承認をもらうなど、フォローアップを行いました。

年々増えていく登録資産に伴い、そのためのモニタリング・フォローアップを行う世界遺産センターや各諮問機関(ICOMOS, ICCROM, IUCN)の仕事量も増えていくのが現状です。
近年、マネージメントプランが完璧でなくても登録されてしまうケースも見受けますが、その場合にのちに苦労するのは締約国自身であり、それをサポートしているセンターや諮問機関であることを考えると、きちんと今後の保全管理まで見通しを立てて行うことが重要なのではないかと改めて感じました。

世界遺産委員会以外の業務補助では、アジア太平洋ユニットが関連している壁画のワークショップ のためのお手伝い(プログラム概要の作成、参加者のリスト作成)や、日本・モンゴル・東南アジア・太平洋小島嶼国にある登録資産のフォローアップ(保全審査状況やセンターに求められている提出物の確認など)を行いました。

私がいたアジア太平洋ユニットには、私以外にもインターン生が常時2~3人いるような状態でした。
しかし、それぞれ行っているタスクは異なり、例えばフランス人のインターン生は主にフランス語書類の語彙チェック(ユネスコは英仏が主要言語であり、ほぼ全ての書類はこの2ヶ国語で作成されます)を行なっておりました。また、現地ミッションに多く派遣されている上司の下でインターンを行なっている場合は、ミッションに関連した遺産や現地での情報収集・まとめを行なっているなど、本当に様々です。

http://whc.unesco.org/en/news/1326

●    インターンシップを終えて

今回のインターンシップを終えて、私が一番に感じた事は「書類作業に慣れていて損はしない」ということです。
世界遺産センターは事務局ということもあり、文書作成やプログラム作成といった機会が非常に多く、想像以上のデスクワークでした。現代において多くの学生がマイクロソフトを使いこなせると思いますが、それぞれの組織で形式やスタイルも違います。そのため、使いこなせるようになって損はないかと思います。加えて、イラストレーターやその他ソフトが使用できることもプラスになります。

また、メールでのやり取り、公式文書を書くときの英語(もしくはフランス語)は、機会があれば積極的に勉強しておくべきです。
事務局として、締約国や専門家にメールやレターを送ることもあります。その際の文言や独特の言い回しなど、覚えないといけないことはたくさんあります。

以下はあくまで個人的な感想ですが、今回一番苦労したのはユネスコでのインターンシップのポジションを認めていただくまで、です。ユネスコのウェブページからの応募では一般的にお返事をいただくことは少なく、それぞれのデスク担当者に直接履歴書とともにメールを送る、また自身の身元を保証してもらえるように一言添えてもらう、などインターンシップにたどり着くまでの過程が一番大変でした。同時に、英語での履歴書作成について学ぶこともでき、四苦八苦したことも今となっては糧になったと思います。

今回のインターンシップにあたっては、準備からインターンに従事している期間も含め、学ぶ事が多々ある実りの多い経験でした。


*第39回世界遺産委員会を傍聴に来ていたクラスメートと。