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【インターンシップレポート】「IUCN」山口諄也

2020年3月16日 11時19分
学外イベント


人間総合科学研究科 世界遺産専攻 山口諄也

1.はじめに

私は、2019年2月から8月まで半年間、スイスのグランに本部を構えるIUCN(国際自然保護連合)のインターンシップに参加させて頂きました。IUCNは、1948年に設立された国家・政府機関・非政府機関・NGOや企業団体など多くの会員から構成される世界規模の自然保護ネットワークです。IUCNの各専門委員会と加盟する会員は、蓄える豊富な専門知識を活かし、生物多様性の保全や自然資源の保護を目的とした活動を行っています。

また、IUCNはUNESCOの世界遺産委員会に対し、諮問機関としての役割を担い、IUCN内にある世界遺産プログラムチームは、自然遺産の新規登録技術的調査・評価、既存の登録資産に関する保全状況の監視・評価を行っています。

私が担当した業務はアゼルバイジャン共和国・バクーで開催された第43回世界遺産委員会に関する業務です。



2.第43回世界遺産委員会に関連する業務について
世界遺産委員会は、既存の登録資産の保全状況や新規登録資産を主な議題とし、世界遺産に関連する議論が行われる年次会合です。2019年は、アゼルバイジャン共和国の首都バクーで第43回世界遺産委員会が開催されました。UNESCOの世界遺産センターが事務局となり、IUCN、ICOMOS(国際記念物遺跡会議)やICCROM(文化財保存修復研究国際センター)の諮問機関も出席します。

私は2月にスイスに到着し、およそ1か月を自然遺産の新規登録や保全状況のモニタリングに関する文書の読み込みに時間を割きました。そして4月に入り、世界遺産委員会関連のサポート業務が始まりました。最初のいくつかの業務は、IUCNの各地域に審議予定の新規資産や既存登録資産の告知レターの作成業務、チームが保有する過去の各資産における現地調査で撮影された写真の整理業務です。告知レターの作成の際には、各地域に対応した言語として、英語版以外にもフランス語版とスペイン語版も準備する必要がありました。私は各地域に送る文書の編集を担う責任ある立場として、ミスのないよう再三の確認を行いながら実施しました。

5月以降になると、6月の末に差し迫った世界遺産委員会に向けた準備業務も佳境を迎え、私は世界遺産委員会に出席するIUCNの代表団のサポートとしてロジスティックス業務を担当しました。私は、総勢13名の代表団の参加登録申請、宿泊先の選定、フライトの管理、ビザの情報やスケジュールの管理と会期中に開催されるサイドイベントの実施に向けた準備を務めました。サイドイベントは、世界遺産委員会期中の昼休みや本会議終了後の夕方に行われ、諮問機関や各国政府、NGOなどが世界遺産に関するテーマで取り組みや成果に関する発表を行うイベントです。私は、IUCN主催のサイドイベントの配布資料やフライヤー作成、各諮問機関の担当者と綿密な連携を取りながら準備しました。締め切り直前での変更対応もあり、一部メンバーの所在する地域との時差や開催国であるアゼルバイジャンの現地スタッフとのやり取りに苦労しながらも、代表団の現地や道中における懸念事項を最大限解消し、代表団の業務が円滑に遂行できるようサポートを進めました。

2019年6月30日、UNESCOのオードレ・アズレ事務局長も出席した開会式を皮切りに、第43回世界遺産委員会がバクー・コングレスセンターで始まりました。現地での私の業務は大きく分けて2つでした。1つ目は、先述のサイドイベントの会場のセッティングや関係各所との調整業務です。サイドイベントのセッティングでは、本会議が昼休憩に入る30分以上前に議場を離れ、控室から必要な配布資料やロールバナーをサイドイベント会場に運搬・設置、プレゼンテーション資料の動作確認を行いました。イベントの開始前には、来場者の誘導案内、イベント中も発表内容の記録を行うなど多岐に渡りました。

2つ目は、IUCN代表団のサポート業務です。代表団は、本会議中の審議に登壇するだけでなく、世界遺産委員会に参加中の各国関係者と資産の保全状況の確認を二者間協議として実施しています。そのため、私はメンバーのスケジュールの共有や会議室の確保・管理、本会議の審議内容の記録など、最善を尽くしました。

また、現地では、ドイツ・コトブスからインターンシップとして、委員会期中のみIUCNの代表団に加わった学生と共に、多忙な業務を協力して遂行し、交流を深めることもできました。


3.まとめ
IUCNインターンシップを通して、スイスのIUCN本部での業務や世界遺産委員会をはじめ、国際的且つ多様な環境に身を置き、自然保護・自然遺産に携わり、豊富な知識を有する専門家の方々の業務をサポートすることができ、自身の研鑚を積んだことは人生において大変に貴重で有意義な経験になりました。また、IUCNのチームメンバーなど多くの専門家が膨大な時間をかけて、自然遺産の保全に貢献する姿を目の当たりにし、自身の姿勢も見つめ直すための絶好の機会となりました。半年間の実際の業務で培った経験を活かして、今後の研究や将来の活動に精進したいと思います。