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【レポート】世界自然保護連合(IUCN)インターンシップレポート

2017年2月17日 11時40分

世界自然保護連合(IUCN) インターンシップレポート

 

太田早耶

筑波大学大学院人間総合科学研究科世界遺産専攻

 

The report on my internshipat IUCN

 

SayaOta

World Heritage Studies,Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba

 

 

私は今回、自然保護寄附講座のご支援のもと、世界自然保護連合International Union for Conservation of Nature (以下IUCN)の世界遺産プログラムで半年間のインターンシップを行ってまいりました。IUCNの本部はスイスのジュネーブ近郊の町、グランにあり、本部で働く200300人のうち、世界遺産プログラムには6名の方が所属していらっしゃいます(図12)。私がお手伝いさせていただいた主な業務は、世界遺産委員会の準備と世界自然保護会議の準備の2つに分かれるため、以下、それぞれについて業務内容と感想を簡単に述べさせていただきます。

 

1. 40回世界遺産委員会の準備

  今年の世界遺産委員会は7月半ばにトルコのイスタンブールで行われました。情勢不安のため、残念ながら私は会議自体には出席できませんでしたが、事前準備の方に携わらせていただきました。私がお手伝いした業務は、評価書の生物名のチェックや、IUCNメンバーへのニュースレター、各国使節への手紙の作成の手伝いなどに加え、メインの業務として、第40回世界遺産委員会の概要の作成と、サイドイベントの管理があります。概要に含まれる内容は、会議のプログラムや、どの資産が議論され、誰がいつ演台に立つかという業務に関わることから、イスタンブールの市内交通や空港の情報等一般的な事まで多岐にわたります。サイドイベントは、会議の合間に諮問機関等によって行われるイベントで、IUCNでもいくつかイベントを開催することを決定し、私はその取りまとめと管理、ICOMOSのサイドイベントの担当者の方と連絡を交わして、プログラムの調整を行いました。

実際に会議に行くことがかなわず、委員会の雰囲気を肌で感じることができず残念でしたが、世界遺産委員会のための業務に携わらせていただくことで、諮問機関がどのように会議に向けて準備を進めているのか、世界遺産に関してIUCNの中で何が話し合われているのかについてふれることができ、大学の授業で学んだことの現実の場面を見るという、大きな経験を得ることができたと思います。

 

2. 世界自然保護会議の準備

  世界自然保護会議World Conservation Congress4年に一度IUCNによって開催される、自然保護に関する最も大規模で重要なイベントのひとつです。IUCNのメンバーのみならず、世界中から環境保護や自然資源の管理・利用などに携わる方々が参加し、前半のフォーラムでは多種多様なイベントが行われ、後半の総会ではIUCNの方針について議論が交わされます。2016年の開催地はアメリカのハワイ州ホノルルでした(図3)。

 私は主に、世界遺産プログラムのチームが主催するWorld HeritageJourneyNature-Culture Journeyのお手伝いをさせていただきました。各Journeyの中にたくさんの、それぞれのテーマに関わるイベントがあり、イベントごとに責任者や話し手がいます。私はこれらのイベントのためのリストの作成や更新、またイベント関係者の連絡先の管理を行いました。他の仕事としては、Nature-Culture Journeyのために作られたグループサイトの更新や、イベントのフライヤーの作成、ハワイへの配送の準備などがあります。特に印象的だった業務は、Nature-Culture Journeyのために缶バッジをデザインし、イベントで関係者の皆さんに配布したことです(図4)。私がデザインしていいのかと最初は戸惑いましたが、現地で缶バッジを受けとった方が喜んでくださったり、デザインを褒めてくださると、私もとても嬉しくなり、やりがいを感じられました。現地ではイベントの手伝いや、チームが関わるイベントの情報更新等を行いました。フォーラム開催中はまた、これら二つのJourneyのイベントも多く開催されるProtected Planet Pavilionのお手伝いもさせていただき、会場設営や整備、イベントの調整を行いました(図5)。

 準備段階から関わらせていただいていたものが、実際に現場で運営されていくのを見るととても感慨深く、私がお手伝いしたのが小さなことではあっても、IUCNのチームの一員としてこの大規模な会議に貢献できたのだと思うと、喜びと同時に達成感を得ることができました。忙しくて目が回りそうなこともありましたが、興味のあるイベントの見学や、会場内の散策の時間もいただき、様々な形で自然に関わる、世界中から来た方々の熱気のようなものを直に感じられ、またそのような方々とお話しできたのも、本当に貴重な経験のひとつです(図6)。

 

3. 感想

 社会で働くこと、こんなにも国際的に多様な場に身を置くこと、そのどちらもが私にとっては初めてのことであり、壁にぶつかったり心が折れそうになった回数は数えきれません。しかし同時に全てが新鮮で、面白く、興味深く、落ち込んでいる暇がないくらいだったこと、そして周りの方々が本当に優しく私を受け入れてくださったことが、この半年間を、私の人生でも最も有意義で刺激と発見に満ちた時間のひとつにしてくれました。このような機会を私に与えてくださった先生方、応援してくれた家族や友人、そしてこの半年の間にスイスやハワイで出会うことができた素敵な方々に、心からの感謝を申し上げます。ありがとうございました。


図1. IUCN本部エントランス(以下図15:撮影:太田早耶)


2. 世界遺産プログラムのオフィス

3. 会場


4. 缶バッジのデザイン画



5. Protected PlanetPavilion


6. 世界遺産プログラムのチームの皆さんと(撮影:不明)