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【レポート】陸域フィールド実習in八ヶ岳

2014年8月26日 14時14分



7月の13日~15日に、長野県八ヶ岳・川上演習林で陸域フィールド実習が行われた。この実習では自然保護、特に陸域の生物多様性保全に関連する野外調査手法等を身につけること、希少野生生物の生育環境などの観察を行うことが目的とされた。

 初日はまず、安全対策のレクチャーを受け、その後希少種であるヤツガタケトウヒの観察を行った。ヤツガタケトウヒは八ヶ岳周辺でのみ見られる種であり、葉がひし形で厚みがあるのが特徴である。また同じく、ヒメバラモミやイラモミなどのトウヒ属、広葉樹のハリギリなどを観察し、見分け方や自生場所について学んだ。







2日目は川上演習林で、ヤマネの観察や植生調査実習を行った。ヤマネは天然記念物に指定されていて、川上演習林では塩ビパイプを利用した巣箱を設置し、調査が行われている。演習林を歩きながら1つずつ巣箱を開けていき、ヤマネがいるか確認していった。ほとんどの巣箱は空であったり、以前使用した痕跡と考えられるコケや落ち葉が詰まっていたりといったものであったが、45個中2個の巣箱で寝ているヤマネを観察できた。今回は運が良い方であり、見つからない時は100個程確認してもいないこともあるとのことであった。












その後、川上演習林内の鞍骨山で登山を行った。歩きながら植物を観察していき、ブナやミズナラ、ヤエガワカンバ、ウラジロモミなどの特徴について学んだ。また頂上から山脈を見渡すと、樹冠の形の違いなどから、天然林である広葉樹林と二次林(人工林)である針葉樹林の違いが見てとれた。下山中には毎木調査による植生調査実習を行った。毎木調査とは範囲内の植物種を階層別に全てリストアップし、それぞれの優先度と群度を判定していくものである。今回の実習を行った調査区では上條先生に種の同定と優先度・群度の判定をしてもらい、高木層はミズナラとヤエガワカンバの2種、低木層はツリバナなど約10種、草本層はミヤコザサなど約15種程で構成されていた。












 八ヶ岳演習林ではヌマガヤの中間湿原で植物観察を行った。モウセンゴケなど湿地特有の植物種を観察することができ、川上演習林の生態系との違いを確認した。








 3日目はウラジロモミやハリモミの高木を観察した。今回の実習で観察した、イラモミ、ハリモミ、ヤツガタケトウヒやヒメバラモミはトウヒ属であり、ウラジロモミはモミ属である。モミ属の特徴は、葉先が2又に分かれているとのことであった。







私は普段の研究で野外に出ることはないので、今回の陸域フィールド実習は新鮮なものであった。研究室の管理下の環境とは異なりフィールドでは場所によって多種多様であり、また広いフィールドを調査していく作業は非常に大変なものであることがわかった。またサクラソウやヤツガタケトウヒ、ヤマネといった希少生物の観察を行ったが、個体数が少ないということは調査で見つけにくいということである。今回の実習では既にある程度生息場所が分かっているために観察できたが、実際の研究で現状について十分に知るためには、フィールド調査の技術をしっかり見につけた上で調査を重ねていくことが必要だろう。9月の後半には静岡県の井川演習林での実習があり、植物採集や標本の作成を行う予定である。今回の実習で植物調査について大まかに理解ができたので、井川ではこれを生かしてさらに深い知識や技術を身につけたいと思う。







靏田奈津希