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【インターンシップレポート】「知床財団」瞿芳馨

2018年11月21日 11時39分
学外イベント

【インターンシップレポート】

「知床財団-羅臼ビジターセンター」

人間総合科学研究科 世界遺産専攻 瞿芳馨(クホウシン)

この度私は自然保護寄附講座の支援をいただき、2018年9月3日から9月30日まで、知床財団羅臼地区事務係の拠点施設である羅臼ビジターセンターにインターンシップに行ってまいりました。

知床財団は1988年に斜里町によって設立されました。2005年7月、知床は世界自然遺産に登録されました。そのことをきっかけに、2006年11月、知床半島の南側に位置する羅臼町が知床財団の共同設立者として参画することになりました。知床財団は、地元ならではの創意工夫と努力を重ね、国立公園の現場を担う実働部隊として、「知床を知り、守り、伝える」活動を行っています。羅臼ビジターセンターは、人と知床の自然とを結ぶための拠点の一つであり、知床の自然、歴史、文化、利用に関する展示や映像、解説を通して、知床国立公園を理解し、知床の自然を楽しむための情報を提供しています。


図1: 羅臼ビジターセンター

私は知床財団の羅臼ビジターセンターに所属し、来館者への対応や展示物・掲示物の作成業務を中心に行いました。また、時期によって開催されるルサカフェというイベントのサポートや、財団の職員の方々との野外での草刈り(外来種駆除)、ルサ柵作り、クジラひげ処理などの作業も行いました。羅臼ビジタ-センターは一つの固定された仕事だけではなく、室内と野外を合わせ、様々な仕事ができる職場でした。そのため、インターンシップは飽きることがなく、毎日楽しく、充実していました。


図2: カウンタ―

インターンシップに参加させていただいたおかげで、様々な仕事を体験することができました。以下、いくつかの活動について紹介させていただきます。一つ目はミニレクチャーです。これはインフォメーション業務の一環であり、来館者に展示物を見ていただくだけでは分からないストーリーや自然解説を行う、10分程度の業務です。私は、知床に生息している世界最大級のシマフクロウをテーマにして、2週間ほど発表内容を準備し,インターンシップ期間中、来館者に説明を行いました。


図3: ミニレクチャー

二つ目は自然調査に関する作業です。私が行ったのはVC(ビジターセンター)巡視、自然環境巡視、カラフトマス産卵床調査の3つです。これらの作業はすべて自然環境を把握するためのモニタリング調査です。VC巡視とは羅臼ビジターセンターの運営業務の一つであり、自然情報を収集し、巡視記録を作成し、来館者への説明に利用するものです。この巡視を通して、知床の自然環境の現状を把握することができます。多くの動植物について勉強することができ、知床の自然保護にとって重要な仕事だと思いました。カラフトマス産卵床調査も大切な仕事です。知床ではカラフトマスの資源量が大きく、このことは漁業のみならず、海から森への生態系の循環を担う重要な役割を果たしていることを意味します。そのため、カラフトマスのモニタリング調査の継続は、知床の世界遺産としての価値を守ることにつながります。その調査データは知床世界遺産科学委員会とIUCNにも報告されています。


図4: カラフトマス調査地 

3つ目はヒグマに関する作業です。私が参加した作業はヒグマの解体サンプリング、電気柵のメンテナンス、およびヒグマの糞の採集でした。知床には数多くのヒグマが棲息していますが、観光客や住民とヒグマとの日常的接触、およびそれに伴うヒグマの人馴れが大きな問題となっています。市街地に侵入し、農作物被害が発生することもあります。緊急時には有害駆除をせざるを得ない時もあります。ヒグマの解体サンプリング作業では、捕獲したヒグマの基本データを記入し、外部研究者と共同でヒグマ個体のDNAを調査するためのサンプルを収集しました。また、ヒグマの侵入を防止する電気柵を定期的にメンテナンスする作業をしました。これは、電気柵をチェックするだけではなく、電気柵付近の草を刈る作業も行いました。


図5: ヒグマの解体サンプリング作業

インターンの最後では、「知床エコツーリズム検討会議」に参加させていただきました。この会議には、環境省職員、専門家から地元自治体、関係民間組織など様々な方が出席し、知床の自然状態のみならず、社会環境において現在どのような課題があるのか、持続可能な観光業において今後の方針はどのように決めるのかなどの話を聞くことができました。この検討会議では、行政機関だけでなく、委員の先生方、地域関係団体など多くの人達が集まり、誰もが意見できる場が作られていました。

インターンシップを通して、地域交流および自然保護活動の場へ参加をさせていただき、色々な仕事を体験することができました。とても有意義な時間を過ごすことができたと思います。私は世界遺産について勉強しています。世界遺産である知床の保護と管理について、地域の民間組織はどのように運営されているのか、自分の目で見て、自分の身で体験し、直接感じることができたことが大きな収穫でした。最後に、温かく受け入れて下さった羅臼ビジターセンターの皆様、お世話になった全ての方々に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

注)図2、3、5の写真はビジターセンタースタッフの方にご提供いただきました。