私が行ったインターンシップの内容は、①観光客を対象とした質問紙調査、②インタビュー、③洞窟探 検、④修学旅行生対応、⑤第一回秋吉台国際シンポジウムでの口頭発表でした。これらについて、以下に 簡潔に内容をまとめます。
① 観光客を対象とした質問紙調査 秋芳洞観光客がどこに、どの程度観光価値を見出しているのか、そして彼らの環境意識はどの程度であるか探るため、「秋芳洞の今後を考えるアンケート」と称した質問紙調査を実施しました。質問項目は全 部で 17 個あり、A4 ページ 4 枚の容量でした。調査期間は 2017 年 9 月 28 日から 2018 年 1 月 10 日ま で、配布部数は 170、回収部数は 155、回収率は 91.2%でした。 対面による質問紙の配布・回収では、質問項目が大いにも関わらず意欲的に回答してくださる観光客が 多く、「感動した」、「また来たい」という感想をしばしば聞きました。対面のほか、ジオパーク内の各所 に配置した設置型回収箱と、ウェブ質問紙による回収を実施しました。この調査を行うにあたって、多く の方々からのお力添えをいただけたことは、とてもありがたいことだと思いました。
写真 3. カルスター内に設置した質問紙と回収びん
② インタビュー ツアーガイドさん、秋吉台科学博物館の元館長さん、秋吉台科学博物館の職員さんへ、このジオパークの観光活動や自然保護についてお話をうかがいました。地元住民はもちろんのこと、国内外からの観光客にも愛されている地域なので、より一層発展させていきたいという強い意気込みが感じられました。更なる発展のためには、研究者によって未知のことを解明し、学術価値を高めていくことは必要不可欠だそうです。そのようなお話を受けて、数年前より秋芳洞で研究を続けている私は今後も研究を是非とも頑張っていこうというやる気が大いに高まりました。
③ 洞窟探検
Mine 秋吉台ジオパークには 3 つの有名な観光鍾乳洞があります。それぞれ、秋芳洞、大正洞、景清洞と名付けられています。秋芳洞はこれらの鍾乳洞の中で最大の観光客数を誇り、洞内には大きな河川が 流れています。観光部分はほぼ水平方向へ発達していますが、非観光部分は鉛直方向へ発達している場 所もあり、一般観光客、洞窟探検家の両者から楽しまれています。大正洞は鉛直方向へ発達した鍾乳洞 で、戦時中に牛を隠していたことからかつては牛隠し洞と呼称されていました。景清洞は壇ノ浦の戦い で敗れた平景清が隠れ住んでいた場所として有名で、名称の由来にもなっています。鍾乳洞としては珍 しく、洞内に平景清由来の神社があります。
探検中に、管理方法について学びました。頭上が狭くなっている場所など、危険箇所には注意書きを設置したり、照明を環境負担の少ない LED 照明に変えたりと、工夫が凝らされていました。
写真 4. 非観光部分の秋芳洞
奥に柵付きの観光路が見える。安全面は慎重に配慮されている。 写真 5. 百枚皿リムストーンプール 秋芳洞内に発達した、大規模なリムストーンプール。最大の観光名所の一つとなっている。
④ 修学旅行生対応
広島県の小学校から来た修学旅行生の対応の補助業務を行いました。彼らが体験した内容は、秋吉台科
学博物館裏の石灰岩がゴロゴロ転がっている地帯から化石を含んでいるものを見つけ、ハンマーで標本 サイズまで破砕し、塩酸処理によって表面を磨くことでした。私が補助した内容は、修学旅行生が持って くる岩石は化石を有するものであるかどうかの判断、破砕方法のアドバイス、危険行為防止のための見回り、塩酸処理コーチング、座学の際のパネル持ちなどでした。 写真 6. 貝の化石を多量有する石灰岩 黒っぽく見える弧が貝殻を示す線である。
⑤ 第一回秋吉台国際シンポジウムでの口頭発表
2018 年 3 月 8 日から 12 日にかけて開催された、第一回秋吉台国際シンポジウムで口頭発表を行いま
した。このインターン中に実施した質問紙調査結果と分析結果を報告しました。国外からのゲスト、国内 からの研究者、そして地元住民の皆さんと共に、パネルディスカッション、フリーディスカッション、エ クスカーションを楽しみました。Mine 秋吉台ジオパークと、国外の自然保護地域とではいくらか共通の 問題意識や、開発指針があることを学習しました。今後、Mine 秋吉台ジオパークが世界ジオパークを目 指して活動していくにあたって、このようなシンポジウムはたいへんに有意義なことだと思います。地 元の人だけ、あるいは研究者だけが舵を取るのではなく、皆で話し合って、密に意見交換し、互いのことをよく理解しながら一緒に活動していくことの重要性を再認識しました。 この度は、自然保護寄附講座よりインターンシップをご支援いただき、まことにありがとうございました。秋芳洞へは数年間調査・研究目的で通い続けていますが、このインターンシップにより普段は得るこ とが困難な情報を得て、体験できない体験を享受させていただきました。何もかもが貴重な経験で、今後 の研究人生に大きな影響を与える素晴らしい機会となったと思います。今はもう筑波大学から離れてし まっていますが、自然保護寄附講座でのインターンシップや、授業などによりかけがえのない学びを得 られたことへ深く感謝し、今後も精進してまいります。この度は本当にどうもありがとうございました。 また、インターンシップを受け入れていただいた山口県美祢市世界ジオパーク推進課の皆様、インター ンシップ中に様々な面においてご助力いただいた皆様、そして、地球の生み出したこの尊い大自然へ心 からの感謝を申し上げます。
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