また、業務を通じて、トキの保全の歴史や、現状について知ることができ、その努力と苦労の背景を学ぶことができました。
②保護増殖関係業務
環境省では、積極的に個体数を維持・回復する必要がある種については、保護増殖事業計画を策定(2018年9月時点で64種)して、生息状況の把握、生息環境の整備や動植物園等と連携した飼育栽培下での繁殖の推進などを進めています。また、絶滅危惧種の保全は、減少要因を明らかにしたうえで、自然の生息地で行うことが基本です。これを「生息域内保全」といいます。しかし、生息域内の対策だけでは絶滅を防ぐことが難しい場合には、将来的な野生復帰を目指した飼育栽培下での繁殖などの検討が必要な場合があり、これを生息域外保全といいます。希少種室は、これらの保護増殖事業において中心的な役割を担っています。
インターンシップ期間中に、保護増殖事業の対象種についての会議が何度か開催され、担当の方に同行し、参加させていただきました。今回私は、ライチョウ飼育検討会議(上野動物園)、イヌワシ第1回WG(経産省別館)、全国昆虫施設連絡協議会(多摩動物公園)の打ち合わせの3つの会議に出席し、会議内容についてメモを取り、その概要をまとめました。
参加した3つの会議のうち、ライチョウと昆虫は、動植物園等における生息域外保全によるもので、イヌワシは生息域内保全によるものでした。
保護増殖関係業務を通じて、環境省が取り組んでいる保護増殖事業や生息域外保全活動などについて理解が深まりました。会議への参加を通じて、学んだことは環境省の役割です。保護増殖事業には、多くの人々が関わります。彼らには、それぞれの立場があって、それぞれの考えがあります。目的は対象種の保全と野生復帰ではありますが、人によって目指すレベルなどに差があり、しばしば意見の対立なども起こります。その中で、環境省に求められるのは、その差をなくし、共通の目的に向かって、皆が協力できるように「調整」し、「統括」することだと感じました。加えて、時間や予算も限られてくるので、非常に難しい業務だと感じました。
③種指定関係業務
希少種室は、国内の野生生物について絶滅のおそれを評価した「レッドリスト」の作成と「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」に基づく、国内希少野生動植物種・緊急指定種の指定において、中心的な役割を担っています。
種指定関係業務では、各市町村の希少種保全条例の策定状況調べを行いました。私は、沖縄県と鹿児島県の策定状況について調べました。種の保存法に基づいて、種の指定を行う際、各自治体が、個別の種について保全の取り組みを行っているかどうかという情報は重要となりますが、その情報の整理は網羅的には行われていません。これらの情報整理の一環として、今回、条例の策定状況調べに携わらせていただきました。
レッドリストの作成や希少種の指定など、最も希少種室らしい業務でした。私が行ったのは、沖縄県と鹿児島県の条例を調べるという、時間のかかる地道な作業でしたが、大変意義のある業務だったと感じています。
希少種や絶滅危惧種を保護するうえで、最も重要となってくる法律が「種の保存法」です。この法律に基づく国内希少野生動植物種に指定されることで、指定された種の捕獲や採取は規制されます。しかし、多くの種を指定しても、そのすべてを管理することは難しいです。そのため、地方自治体が独自に、条例を制定し、種を守ることは非常に重要です。しかし、すべての条例の把握はまだ進んでいません。どの条例でどの種を保護しているのかという情報は極めて重要であり、これらが整理されている必要があります。この一端に携わることができたことに、大きなやりがいを感じました。
④認定動植物園認定式
平成30年6月1日に施行された種の保存法の改正により、認定希少種保全動植物園等制度が創設されました。この制度により、認定された動植物園等は、希少野生動植物種の譲渡し等の規制が原則として適用されないことになります。これにより、繁殖等に向けた他園間における個体移動が円滑となり、保護増殖事業で述べた生息域内保全の推進につながることが期待されます。
この認定動植物園の第1回目の認定式が私のインターン期間中に行われ、式の準備などに携わらせていただきました。この業務では、本省の環境大臣政務官の部屋に入らせていただき、認定式をじかに見ることができたという、とても貴重な体験をさせていただきました。
これまで、他園間で動物などを移動させるには、非常に大変な手続きが行われてきました。それを緩和する役割として、この制度が導入されたことにより、生息域外保全が推進されていくと良いと感じました。
⑤出戻りレンジャー報告会
環境省自然環境局では、地方環境事務所や国立公園などの現場で、レンジャーとして働き、本省に戻ってきた方々が、自分たちが経験したことを報告する会が定期的に開かれており、私もお話を聴かせていただきました。今回は二人のレンジャーの発表でした。
一人目は、北海道のえりも自然保護官事務所に配属されたレンジャーの方でした。その方が就任された当時、えりもでは、絶滅危惧種であるゼニガタアザラシによって漁業被害が発生していました。その問題に対応するべく、新たに自然保護官事務所が設置され、その方が事務所で対応にあたられたとのことです。レンジャーの業務内容や、地元の方々との信頼関係の築き方についてお話いただき、レンジャーの仕事は生物を守るだけでなく、人とのつながりが重要な仕事だと感じました。
二人目の方は、スウェーデンへ留学された方でした。留学生活の内容や、なぜ留学をしようと思ったのかなどについてお話いただきました。レンジャーは皆それぞれが多様な業務を経験することで、多様性にあふれた人材になっていくのだと感じました。
〇体験を通じて
本インターンシップにおける私の目的は、環境省における自然環境の保全に関わる業務が、生物多様性や環境の保全にどのように結びついているのかを知りたいと考えたからです。今回私は、本省での体験でしたので、書類の作成などの、事務的な業務が中心でした。そのため、生物の保護に直接的に関わることはありませんでしたが、体験した業務はいずれも、希少種の保全に結びつくものでした。希少種の保全には、生息域等の現場での保全だけではなく、その種の特性や現状に応じた保全の計画を立てることや、専門家や地域住民との信頼関係、協力体制を築いていくことが重要だと、このインターンシップを通じて学びました。
今回のインターンシップでは、非常に多岐にわたる経験をさせていただきました。環境省の業務の大変さとその分のやりがいの大きさも感じることができ、今後の進路を考えるうえで、とても貴重な体験となりました。ご多忙の中、インターンシップを受け入れていただき、温かくご指導いただきました、希少種保全推進室の方々をはじめとした環境省の皆様に心から感謝申し上げます。